③ドン・ロドリゴ(スペイン)

 16~17世紀に入った世界は大航海時代を迎えます。
コロンブスのアメリカ大陸発見などの華々しい事件の陰に、嵐に襲われ、岩に座礁し難破する船も多かったようです。
1609年(慶長14)、房州安房国岩井田村に嵐によってバラバラになって漂着したスペイン船サン・フランシスコ号もそのうちの一隻でした。
陸に上がったものの何処とも知れず絶望の淵へ追いやられた彼らに、やがて暖かい救援の手がさしのべられます。
裸同然で疲れ切った彼らを岩井田村の人々が発見し、村へ案内しました。
船に乗っていたフィリピン臨時総督のドン・ロドリゴ(スペイン)は見聞記の中で、この村はこの島で最も貧しいだけでなく、日本中で最もさびしく貧しい村と思えた。
なぜなら、住民はたった300人しかいないうえ、大多喜の殿様に隷属しているからであると記しています。
しかし、遭難者は同情されるほど貧しい村でしたが、村人は献身的に彼らを助けました。
とりわけ婦人たちは涙を流して同情し、少ない衣料の中から綿入れを彼らに与えました。
ロドリゴは、その情は婦人たちの夫にも通じたからだろう。
男たちからも私や他の者たちに食べ物やいろいろなものを惜しむことなく分け与えてくれたと言っています。
事件は藩主に知らされ、藩主を通して江戸へも伝えられます。
ロドリゴ一行はその後江戸へ向かい将軍秀忠に会い、駿府で家康とも会い、家康の援助で当初の目的地であったアカプルコへ無事帰りつくことになります。
ロドリゴは建設途中の活気あふれる江戸を見たせいか、それとも37日間世話になった岩井田村の温かい思い出があったせいか、こう書いています。
日本人というのはとにかく素晴らしいレベルをもっている。
日本を武力によって制圧することは困難であり不可能である。
日本は住民が多い。しかも勇敢である。死を恐れない。

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