54) 桜

サクラといえば春、春といえばサクラと思うのが常ですが、日本では一年中、どこかでサクラの花が咲いているといっても過言ではありません。早くも1月のうちに咲くカンヒザクラから北海道など雪解けを待って遅く咲くタカネザクラなどがあり、それ以外に、秋から冬にかけて咲くサクラもあります。
サクラは自然が日本人にくれた素敵な贈り物です。大切にしましょう。日本のサクラには10種の野生種(ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、ミヤマザクラ、チョウジザクラ、カンヒザクラ、エドヒガン、オオシマザクラ)があり、そのほか自然的な交配や人為的交配によりつくられた栽培品種が300種ともいわれています。

●染井吉野
①かつて桜といえばヤマザクラを指しましたが、明治以降、特に戦後はソメイヨシノを指すようになりました。なぜなら、この品種は若木のうちから花がつき、成長が早く、学校、公園、街路など新たに植えるサクラのほとんどがソメイヨシノになったからです。
私たちがサクラをイメージするときの花は、このソメイヨシノでしょう。(現在、日本に咲くサクラの7~8割はソメイヨシノといわれています。)
また、東京市が寄贈したワシントン・ポトマック河畔のサクラも、気象庁、気象情報会社による開花宣言やサクラ前線の基準もソメイヨシノです。(ソメイヨシノは接ぎ木、挿し木で増やされ、すべてがクローン(同質遺伝子)です。
そのため花や葉が同じで、同一条件下では開花日も同じという特質があるので、全国的な標準木として最適なのです。)

②ソメイヨシノがいつ生まれたか正確な記録はありませんが、幕末、江戸染井村(現在の東京・巣鴨近辺)の植木屋が開発して売り出したといわれています。近年はどこの町や村でもサクラの名所があり「桜まつり」が行われていますが、戦後の名所のほとんどがソメイヨシノ一色に染まっています。しかしヤマザクラを良しとする人もとても多いのですが、いまや日本全国ソメイヨシノに埋めつくされた感じです。ただ、ソメイヨシノの欠点は寿命が短いこと(最長でも100年程度)、そして病虫害に弱いことです。

③ソメイヨシノとヤマザクラの違いは、ソメイヨシノはまず花だけが咲いてその花が散った後、緑の若葉が萌えだしますが、ヤマザクラは花が咲くと同時に若葉が芽吹きます。花の色を見てもソメイヨシノは薄紅ですがヤマザクラは白。しかしヤマザクラは花と同時に出る若葉の色が木によって緑からえんじ(黒みを帯びた赤色)までいろいろあるので、同じヤマザクラといっても若葉の色と交じり合ってさまざまな色合いを見せます。
ヤマザクラは野生の桜であり、ソメイヨシノは純粋に花だけを観賞するために作り出された人工品種なのです。

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